稲垣吾郎が後輩たちに見せる“先輩”としての姿 三宅健、Number_iらに向けた優しい眼差し

 稲垣吾郎のトークはいつも心地よい。テレビでも、ラジオでも、そして雑誌でも。稲垣がゲストの言葉を引き出していくスタイルが、近年より多く見受けられるようになったのは、稲垣のMC力が年々鮮明になってきた証ではないだろうか。

 作家、監督、俳優、アーティスト……と、多くの文化人をゲストに迎え入れてきた稲垣。ときには、なかなかメディアへの出演オファーに首を縦に振らないゲストが「相手が稲垣吾郎なら」と快諾したという話もあった。それは、稲垣の柔らかな物腰と品のある言葉選びからくる居心地のよさは言わずもがな、ゲストの作品をしっかりと味わった上で対面してくれるというマナーを心得ている人だという安心感があるからだと思う。

 そのスタイルは、「失礼があってはならない」と思わず身が引き締まる大御所や人生の先輩たちに向けてだけではなく、何十歳と年齢の離れた若手や後輩たちに対しても変わらない。エンターテイナーにも人としての誠実さが求められる昨今、そんな稲垣のフラットなスタンスは多くの視聴者に向けても心地よく、そして安心感のあるものとして映っている。

 5月12日、稲垣がパーソナリティを務めるラジオ『THE TRAD』(TOKYO FM)に、Number_iがゲスト出演した。かつては先輩/後輩という関係性だった稲垣とNumber_i。とはいえ、その関係性は楽屋で挨拶を交わす程度だったそう。だからこそ、稲垣はあえてオープニングから平野紫耀に「マイクに近い!」と、ちょっぴり先輩風を吹かせて場を和ませていたように感じた。

 台本に沿って3人が稲垣のイメージについて問われたとき、「上品で、(自宅には)生ハムの原木があって、赤ワインがあって……」と世間一般の人が思い浮かべるものと大きくは変わらないのだと遠慮がちに話すと、自らそのイメージに乗っかって「ないの? 生ハムの原木!?」と驚いてみせるというノリのよさ。そこから、平野が神宮寺勇太に生ハムの原木をプレゼントしたことがあるというエピソードトークへとつながるのだった。

 無理なく会話が続くというのは、細かく相手を観察するというのも大事なポイント。稲垣は、Number_iがそれぞれ自分のペットボトルを見分けるために、サインとカラーバンドを付けていることにも注目して話を振る。カメラのないラジオブースでのそうした気づきは、リスナーにとってもありがたい。

 しかも、神宮寺と岸優太の色が似ているという細かなところにまでツッコミを入れると、岸の口から「そうなんですよ。だからコンディション的に間違えるときもあります。ま、メンバーなんで間接キスは間接キスで」と仲のよさが窺えるコメントを引き出すことにも成功した。自然体でいるだけでトークが積み上がっていく。そんなリラックスして話せる空気を、先輩として作っていったように感じられた。

 そうして緊張が溶けた頃合いを見計らい、3人に「自分と重なることが多くて」と、優雅に距離をスッと近づけていくのも稲垣らしい話の運び方。かつていた事務所から飛び立ち、草彅剛、香取慎吾とともに新しい地図を広げた稲垣。対して、状況は異なるものの新たな世界を目指して3人で歩み始めたという点で、平野、神宮寺、岸に「勝手な親近感が湧いている」と語りかけるのだった。

 その眼差しには、後輩を見守る温かなものに加えて、才能を眩しく見つめるリスペクトも滲む。もちろん、この日を迎えるにあたり、彼らのアルバムをしっかり聴き込んできた稲垣。「かっこいいよね!」「好きな音楽、みんなやってるんだなって」と興奮気味に感想を述べる姿も印象的だった。

 加えて、新たな挑戦を続けていくNumber_iを見守り続けていくファンについても「いいよね、その関係性が!」と続ける。人は自分自身が褒められるのも嬉しいが、自分の大事にしているものを褒められると、さらに距離が縮まるような気がするもの。Number_iにとっても、そしてiLYs(Number_iのファンの呼称)にとっても、稲垣のこの言葉には心が温まったのではないだろうか。

 また、この日はTOKYO FMのスタジオにtimeleszの菊池風磨がやってきて稲垣に挨拶をした話も飛び出した。なんと稲垣はこの4月から同局で始まった菊池のラジオ番組『菊池風磨 hoursz』もしっかり聴いているというから驚きだ。かつて同じ場所にいた頃から距離が離れても、稲垣のなかで先輩/後輩の縁は緩やかに続いていく。

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