DJ FUMIYA×Kj×鈴木真海子×宝鐘マリン、普段は味わえない刺激 意外なコラボ楽曲「サンバースト」制作秘話

『音楽蒸溜所』2025年第1弾コラボ秘話

 バカルディによる音楽プロジェクト『BACARDI Sound Distillery 音楽蒸溜所』の2025年第1弾コラボ楽曲「サンバースト」が公開された。

 本企画は、アーティストたちがバカルディとともに新しい楽曲を創り出すというもの。今回は、昨年のRIP SLYME×サーヤの楽曲コラボレーションに引き続き、ベーストラックをDJ FUMIYA(RIP SLYME)が制作し、ボーカルにKj(Dragon Ash/The Ravens)、鈴木真海子(chelmico)、ホロライブ所属のVTuber 宝鐘マリンが参加。ブレンドテーマ“Oceanside Twilight”をもとに、解放感あふれるサウンドの中で互いに自分らしさを発揮し合う見事なコラボソングが誕生した。

 この異色のコラボ企画について、現在の心境や、制作背景、楽曲に込めた思いを4人に語ってもらった。(荻原梓)

鈴木真海子・宝鐘マリンに声をかけた理由

ーーまずは楽曲が完成した今の感想を教えてください。

FUMIYA:いやもう感無量といいますか。こんな濃いメンバーで曲を作ったことがなかったので、最初オケを作り始める時に悩んだんですけど、いい曲ができて最高です。

Kj:俺、FUMIYAのことは十代の頃から知ってるんで、いい歳になってまた音楽を通して遊べた感じでしたし、コミュニケーションを取るのも久々なので、それがまず嬉しかった。真海子ちゃんと船長(宝鐘)を呼んだのは“会わない”という趣旨があったから。基本的に俺は音楽をやっててその“会わない”っていうのをネガティブに捉えるんですけど、むしろ“会わない”からこそできることとか違和感を、逆に楽しめたら俺たちにとってもやりがいがあるなって思った。それを聴いてる人も面白がってくれるんじゃないかと思って2人の名前を挙げさせてもらいました。

FUMIYA:さすが。

鈴木真海子(以下、鈴木):私はまずこの企画に参加できて嬉しいというのと、もちろんリップの音楽を聴いてたし、マリンさんも聴いてたんですよ。なのでこの組み合わせが意外で、どうなるんだろうって思ってて。それをFUMIYAさんがうまくまとめてくれたことにも感動したし、バカルディの夕方の海のイメージにもめっちゃ合う楽曲になったし、自分もうまく歌えたんじゃないかなって思ってます。

ーーマリンさんはどうですか?

宝鐘マリン(以下、宝鐘):船長はですね、いつもはアニソン~キャラクターソングみたいな楽曲が多いので、こんなにお洒落なザ・アーティストって感じの楽曲を歌ったのが初めてで。こんなバチバチの、テレビとかで流れてるような曲の中に自分の声が混ざっちゃって、どうなるんだろうって思ってました。完成したものを聴いた時は正直、突然子供が途中から混ざってきたみたいな(笑)。ものすごい自分の浮きっぷりにたまげたんですけど、逆に浮いてる感じがいいのかなと思ってます。

FUMIYA:存在感が一番いいですよ。

Kj:うんうん、いい感じでした。

宝鐘:貴重な体験をさせていただけてありがたいです。

ーー最初にこの企画の話を聞いた時の心境や、今改めて楽曲を聴いてみていかがですか?

宝鐘:まず自分がこんなにアーティストみたいな企画に呼んでいただけるっていうのが、「その1」のたまげポイントで。「その2」のたまげポイントは、楽曲が来て、めちゃめちゃラップがあったじゃないですか。「ラップなんか歌ったことない、できないよ!」と思ったら、自分のラップパートがほとんどなかったことですね。

一同:(笑)。

宝鐘:だから安心しました。お歌のパートをやらせてもらって、みなさんの素敵なラップの中に混ぜてもらって感無量です。

Kj「完成したものが思ってたより違和感があって、不自然なのはよかった」

ーートラック制作やレコーディング時にはどんなことを考えてましたか?

Kj:2人の名前(鈴木真海子、宝鐘マリン)に“海”がついてるから、海をキーワードにしようっていうのと、バカルディのロゴに燃えるような夕日があるので、「サンバースト」(雲間から太陽が差し込む光景をイメージしたモチーフ)をタイトルにしました。タイトルがフックになってるのがリップっぽいなって俺は思ってます。

FUMIYA:オケで言うと、テーマが夏、キーワードに夕方、ギター、ラテンっていうのがあって、それはなんとなく制作時に考えてたんですけど、ボーカルが建ちゃん(Kj)と真海子ちゃんとマリンさんに決まって、どういう方向性にしたらいいんだろうと迷ってたんです。それで土台を何回も何回も作り直して、構成なんかも細かく3人が入れ替わるものを自分としては考えてたんですけど、でも建ちゃんから「もっとシンプルでいいんじゃない」ってアドバイスをもらえたことで一気に先に進めました。すぐにフックとかトップラインを書いてきてくれて、そこからがすごく早かったですね。さすがだなと思いました。

Kj:FUMIYAは音楽業界の中でもかなり付き合いの長い一人で、30年近い仲なんです。

FUMIYA:ただ僕のオケで歌ってもらったことはなかったんですよ。

Kj:演奏とかはしてるけどね。

FUMIYA:そうそう。

Kj:でも結局FUMIYAの思う壺だったような気がしますね。RIP SLYMEの外側に出れなかったなって感じがする。特にBメロで3人で合わせてるところは、俺が最初一人で3声で3度下と3度上をハモってたんですけど、もうリップでしかない。個性が強いんですよ、彼のトラック。音数が少なくて誤魔化さないスタイルで、音を積まないので逆に自分の声が生々しい。結局それってリップがやってることだし、コンビネーションマイクにしてやっと体をなしてる、それもリップだし、俺はあんまり自分の方に引っ張れなかったっていうのがある。

FUMIYA:いやいや、めちゃめちゃぐいぐい引っ張ってましたよ。

Kj:完成したものが俺が思ってたより違和感があって、不自然なのはよかったですね。最近違和感がない方向の、うまく形を作ってくみたいな音楽ばかり。今の音楽ってパテ埋めをするんですよ。だからその「えっ?」みたいな違和感、戸惑いをそのままにしたほうがドキッとするんで。その“ドキッ”がたぶん自分たちが普段、単体でやってる音楽では味わえない。それを今回4人それぞれ感じられたんじゃないですか。

FUMIYA:このコラボじゃないと感じられないタイミングだったよね。

宝鐘:普段ホロライブメンバーと歌ってても自分が異色に感じることはないんですけど、やっぱりアーティストの方と歌うと、自分の毛色がめっちゃ違うなって感じて、よりお互いの個性が引き立ったんじゃないかと思います。

FUMIYA:たしかに。

ーー歌入れする時は、いつもと違う意識だったりしましたか?

宝鐘:最初はうまく馴染むように、あんまりアニメアニメしないようにしようと思ってたんですけど、レコーディングの現場で「マリンさんらしくいきましょう」とか「ここはキャピキャピでいきましょう」と言ってもらえたので結局いつも通りに歌って、いつも通りのマリンで混ざることになりました。

Kj:そうじゃないと呼んだ意味がなくなっちゃうもんね。

宝鐘:よかったです。

ーー真海子さんはいろいろとコラボしてますけど、今回はどんな意識で取り組んだんですか?

鈴木:最初にKjさんの声が入ったデモが送られてきた時に、バースとか歌詞もメロディも構成も完璧すぎて。私は何をやったらいいんだろう、どうしようかなって思ってたけど、「好きなようにやっていいよ」と言ってくださったので、もともとの歌詞も取り入れつつ楽しく書けました。

ーーこの楽曲の中で大切にした自分らしさはありますか?

鈴木:chelmicoの時は結構ちゃんとラップするんですけど、ソロの時は歌ものが多いので、今回はそれを意識しました。後半でコーラスを入れたりして、そこでちょっとゆったりした海感を出しました。

Kj:俺はたしかトラックを聴いた時に「DJ FUMIYAが過ぎる」って言ったんです。たぶん4人の中では俺と船長が普段やってる音楽と乖離してると思うんですけど、その違和感をどうしようっていうのもあった。でも、言うて、勝手知ったるお友達なんで。死ぬほど一緒にツアー回ってたし、まだカルバン・クラインを買えなくて、ケルビン・クラシックっていうスペルが似てるボクサーパンツを履いてた頃からの仲なんで(笑)。だから俺はもうとにかく逆らわないように、FUMIYAが作ったプールの中で全力で泳ぐ。めちゃめちゃリップに寄せてフロウも寄せたし、サビのあのちょっとメロウになってくのも寄せたし、めちゃくちゃFUMIYAに寄せてみました。

宝鐘:レコーディングの時に「海辺でみんなで肩を組んで歌ってる感じでお願いします」みたいに言われて、いろんなパターンをやったんですよ。もうちょっとチルい感じでとか、満面の笑顔でとか。でも結局、一番ルンルンなやつが一番いいみたいになりまして。いい意味でも悪い意味でも、「マリンはマリンです」みたいな感じになっちゃうんで、逆に自然体で、自然にマリンらしさが勝手に出た気がしてます。

FUMIYA:やっぱりマリンさんが入ってきた時の衝撃というか、「うわすごい!」って。そこで結構体温が上がりましたね。だから自分は余計なアレンジはしなくていいし、盛らなくてよかった。あえて言うならボトムのリズム隊ですよね。フックでビートが変わる感じ、あそこの部分で美味しく持っていけたらいいなくらいで、あとは3人の個性あふれる歌い手さんたちがいれば、シンセを足したりとか上に持ってく必要もないなって。しかもラテンってワードもあったので、リズムで引っ張ってあげれば全然バッチリだと思ってました。

サンバースト feat. Kj, 宝鐘マリン, Mamiko (Produced by DJ FUMIYA) | Music Video

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