SUPER★DRAGON、“ダークヒーロー”としての使命　結成10周年にして初のアルバム『SUPER X』音楽性の広がりと深化

　9人のメンバーが一人も欠けることなく結成10周年を迎え、メジャーレーベルから初のアルバムをリリースする。それはSUPER★DRAGONを追い続けてきたファン（通称BLUE）にとってはとても感慨深いことだろう。そして彼らはライブのたびに、BLUEをもっと大きくてワクワクできる景色が見られる場所に連れて行く、といった旨のことを繰り返し話してきた。ここに届いたニューアルバム『SUPER X』はまさにその言葉が漠然とした夢物語ではないことの証明。SUPER★DRAGONとはどんなグループなのかを明示し、その存在をスケールしていくという宣言の道標となる作品だと言えよう。

　タイトルにある“X”は、おそらく単なる10周年ということではない。Xという未知なる何か、Xデーという破滅的な未来など、さまざまな意味を含んでいるように思える。SUPER★DRAGONは、これまでも曲やパフォーマンスの中でたびたび、ディストピアと対峙する姿勢を示してきた。そして今回は、その部分にフォーカスし、さらに意識を尖らせている。10年も同じメンバーで活動していれば、とうぜん紆余曲折がある。彼らはその歴史を経て、戦うことを選択し自らを“ダークヒーロー”と位置付けた。

　本作のもっとも大きな特徴として、メンバーが全編に渡って楽曲の制作に携わったことが挙げられる。全員が“ダークヒーロー”というテーマを共有し、古川毅、ジャン海渡、池田彪馬、松村和哉が作品の流れや楽曲制作、作詞、プロデュースを信頼するクリエイターとともに担当した。まずは、そこに至った経緯を辿ってみる。

　SUPER★DRAGONは、3人のボーカリストと2人のラッパー、彼らを含めた9人のダンサーという（基本的な形態として。役割がシャッフルされることもある）、多様な個性の集合体であることを活かし、“ミクスチャーユニット”としてさまざまな音楽性を打ち出してきた。初期のラップメタルやダブステップのイメージが強い時期から、ヒップホップ、ハウスやシティポップ、K-POP、ロックなど、書き出せばキリがないほどに。

　その間にヒップホップの洗礼を受けた松村はCuegeeとしてソロデビュー。ヒップホップやハイパーポップに精通しているジャンもjjeanとしてソロデビューを果たしている。古川の音楽やファッションといったカルチャーへの愛は、当サイトの連載「古川毅のカタリタガリ」を読んだことのあるファンにはお馴染み。そこに池田のプロデュース力が加わる。そしてパフォーマーとして提供された楽曲を乗りこなすだけでなく、楽曲やアルバムの方向性そのものから自分たちが決めることのできる地点にまでたどり着いた。その兆しは2022年にリリースされたアルバム『Force to Forth』あたりから見え始めていたが、いよいよ本格的に、より深く、より強く動き出したのだ。

　今回のアルバム制作にあたりブレイクスルーとなった曲は、作品のテーマである“ダークヒーロー”をタイトルに冠した「Dark Heroes」だったという。ダークなベールを身にまとい、彼らが活動初期から敬愛するSkrillexの切り拓いた、ダブステップ→ブロステップの流れにドラムンベースを掛け合わせたトラックは、懐かしさもありながら今のクラブシーンとの接続性も高いトラックに仕上がっている。リリックはジャンと松村が担当、ジャンは作曲にも加わっている。アルバムの最後に収録され、〈we won't change you know right？？ watch out, no one can stop our chapter〉という言葉で締めくくる、絶対王者として鎮座しているようなキラーチューン。本作はそんなダークヒーローとしての宣言に至るまでの物語と受け取ることもできる。

　作品はインタルードを挟んで大きく4つのチャプターに分かれている。CHAPTER1は先行シングル3連発で、SUPER★DRAGONの今のモードを叩きつける。彼らのシグネチャーとして定着した、眼光鋭いラップとセクシーなメロディが交差する「New Rise」、ハードなハウストラック「Downforce」、デジタルネイティブなハイパーポップの系譜に連なる「Dreamland」と、その豊かなバックグラウンドと活動の充実っぷりがダイレクトに伝わってくる見事なスタートダッシュだ。