山下美月が“声芝居”で証明した現在地 劇場版『名探偵コナン』で拓いた新たな可能性

山下美月、『名探偵コナン』で広がる可能性

 乃木坂46のエースとしてグループを牽引し、モデル・俳優としても着実にキャリアを重ねてきた山下美月。2024年5月のグループ卒業を経て、俳優業に本格的に軸足を移した彼女は、これまで以上に多様な役柄に挑み、着実に存在感を高め続けている。

 そんな山下が、国民的人気を誇る劇場版アニメ『名探偵コナン 隻眼の残像』で、声優として新たなフィールドに挑戦した。演じたのは、大和敢助の左眼が疼きだす原因の一つとなった、巨大なパラボラアンテナを持つ国立天文台野辺山に所属する施設研究員の円井まどか。まどかは、ミステリーの中心に位置づけられる存在であり、物語における重要な役割を担っていた。声だけでキャラクターに命を吹き込むという初めての挑戦を、彼女はどう乗り越えたのか。

山下美月演じる円井まどか

 乃木坂46時代から彼女を見守ってきた者として、「山下美月が声優に初挑戦する」というニュースには、胸が高鳴った。アイドル、モデル、俳優とフィールドを広げてきた山下が、ついに声で勝負する表現領域へと足を踏み入れたのだ。その舞台が、日本だけでなく、世界中で愛される『名探偵コナン』だったことも、彼女の現在地を象徴しているように思う。

 声優初挑戦にあたって、山下は事前に『名探偵コナン』のテレビアニメのアフレコ現場を見学したという。声優陣がキャラクターに命を吹き込む瞬間を間近に体感したうえで、自らも練習を重ね、本番に臨んだ(※1)。走ったり、驚いたりといったリアクションを声だけで表現する難しさに向き合いながら、初めてとは思えない自然な芝居をやり遂げた。

【ゲスト声優 山下美月のアフレコ見学に密着!】劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(せきがんのフラッシュバック)』4月18日(金)公開!

 2024年5月、乃木坂46を卒業して以降、山下の俳優キャリアは目覚ましい加速を見せた。NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』(2022年度後期)での好演を皮切りに、『スタンドUPスタート』(フジテレビ系)、『弁護士ソドム』(テレビ東京系)といった作品に出演。『さらば、佳き日』では、山下美月はW主演のひとりとして、保育士の広瀬晃を演じた。兄妹の禁断の愛をテーマにした作品の中で、彼女は抑制された感情の奥に潜む切なさや葛藤を繊細にすくい上げた。『Eye Love You』(TBS系)では、山下は一転して軽やかなラブコメディに挑戦。主人公・本宮侑里の同僚であり、恋愛に積極的な“恋愛マスター”池本真尋を演じた。恋愛相談を受けたり、年下の男性にアプローチしたりと、明るく前向きなキャラクターを活き活きと演じ、これまでとは違う大人の女性像を印象づけた。

 『御曹司に恋はムズすぎる』(カンテレ・フジテレビ系)では、堅実な庶民派女子・花倉まどかを自然体で演じ、明るいコメディラインでも無理なくキャラクターに寄り添う演技を披露。地に足のついた可愛らしさと、恋に揺れる微細な感情の機微をバランス良く表現し、俳優としての幅をさらに広げた。そして、初主演映画『山田くんとLv999の恋をする』では、ツンデレな女子高校生・木之下茜役に挑戦。等身大の恋心を繊細に、かつポップに描きながら、スクリーン全体を支える存在感を放った。これまでに培ってきた柔らかな表情、自然なテンポ感、そして抑制された感情表現がここに結実していたように思う。

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