『放送局占拠』に竜星涼×八木莉可子登場の可能性も? 『潜入兄妹』を舞台裏とともに振り返る

櫻井翔が主演を務めた『大病院占拠』(2023年/日本テレビ系)と『新空港占拠』(2024年/日本テレビ系)のスタッフが再集結を果たし、同シリーズと同じ世界観を共有した『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』(2024年/日本テレビ系)のBlu-ray&DVDが6月4日に発売される。
本作は、潜入捜査官だった父の復讐を果たすために、日本最大級の詐欺組織“幻獣”へ潜入を試みる元警察官の兄・貴一(竜星涼)とホワイトハッカーの妹・優貴(八木莉可子)を描いたサスペンスドラマだ。パッケージ発売となるこの機に、改めてその魅力を振り返りたい。
竜星涼×八木莉可子、“真逆の性格”がみせたコンビネーション 『潜入兄妹』への思いを語る
日本テレビ系で放送中の土曜ドラマ『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』(以下、『潜入兄妹』)。父親を殺した犯人を追うべく特殊詐欺グルー…
物語のキーパーソンとなる“幻獣”の幹部たちのキャスト情報を伏せたまま物語がスタートし、エピソードの進行と共に1人ずつ素顔が明かされていく点は、まさしく『占拠』シリーズの成功パターンを踏襲したものといえよう。もっぱら近年の連続ドラマの課題は、いかに視聴者の興味関心を持続させるかということ。前半でキャスト考察を盛り上げながら作品世界へと引き込み、後半で新たな考察要素を提示しながら登場人物たちのバックグラウンドを紐解いていくという二段構えのスタイルは、単純に一本の大きな幹とその枝葉となるエピソードを展開していくよりも観やすく、中盤で急な転換を与えるよりも誠実である。
幻獣に潜入し、その下っ端部隊である“ハコ”の一員として成果を上げることで幹部たちの信頼を獲得し、組織のリーダーで父の仇である“鳳凰”へと近付いていく兄妹。ドラマ前半は、こうした復讐の下準備に焦点が置かれながら、ある種の“ミッション”としてチームプレイで詐欺行為に及んでいく様が描かれる。インターネットくじを加工したり、示談金詐欺や“おねだり女子”なる現代版のロマンス詐欺など、現実世界において年々複雑かつ巧妙になっていく特殊詐欺の手口のパターンを見せ、さらに集金屋に名簿屋、フロント企業といった組織構造の基礎知識を視聴者に与えてくれる。この題材を扱う上で非常に意義深い姿勢といえよう。

ここで忘れてはならないのは、あくまでも兄妹は悪人に対して詐欺を働く義賊的な行いに徹しているということだ。狡猾に弱者を騙す悪に対し、大胆不敵な方法をもって小さな復讐を重ねながら、より大きな悪に一歩ずつ迫る。このような基本的な正義に則った“コンゲーム”だからこそエンターテインメントとして昇華し得るのであり、主人公兄妹の揺るがないスタンスが明確化されドラマが成立するのである。
兄妹が最大の目的であった鳳凰(藤ヶ谷太輔)にたどり着いたドラマ中盤から、本当の意味でこのドラマは始まる。幻獣を壊滅に追い込み、復讐を果たす……それはすなわち、同じハコのチームメイトと培ってきた絆や、幹部から向けられた信頼を裏切るということでもある。“潜入”を描く物語の宿命ともいえる葛藤がドラマ性を高めながら、同時に幻獣の幹部たちにも、彼らを招集した“九頭竜”(川瀬陽太)なる父親的ポジションの人物の仇を討つという目的が浮き彫りになり、相対するものであった兄妹と幻獣幹部の共通性が垣間見えていく。

もちろん、そうした多層的なドラマティックを深めつつも、ハコのなかに潜り込んでいる敵組織の内通者が誰なのか、“二代目・九頭龍”として暗躍している黒幕が誰なのかという謎解きミステリーとしての旨味は保たれつづける。いずれにしても、横浜というロケーションの特色を活かしたエスニックな場面設定の数々と、復讐・裏切り・アクションというノワールの三大要素を介在させたテイストは、さながら香港映画のような硬派な魅力を携えており、すっかりパターン化した日本のサスペンスドラマに飽きた視聴者も存分に楽しませてくれること請け合いだ。